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経営サポート事業

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ロボットビジネスと地方創生

ロボット導入のメリット③ 
農林水産業―導入場面のニーズを探る、高付加価値化を目指す―

【北河】 現在、アスパラガスを収穫するロボットが話題になっています。AIを搭載したこのロボットは、自分で通路を認識し移動しながら、20cm以上のアスパラガスのみを収穫するなどの作業をします。アスパラガス収穫では、親のアスパラガスを抜いてはいけないのですが、それを認識しながら収穫することもできます。

AI 搭載アスパラガス収穫ロボット(写真提供:三井住友海上火災保険株式会社)

また、このアスパラガス収穫ロボットを開発したRobiZy会員のメーカーでは、RaaS(Robotics as a Service、ラース)という概念のもと、ロボット自体を売らずに無料で貸すという取り組みもしています。無料で貸すけれども、売り上げの何パーセントかは支払ってもらうというシステムです。農家にとっては初期投資が不要で、売り上げに応じた一定額を支払えば済むという、利用しやすいビジネスモデルを展開しています。このロボットは方々で応用されています。例えばアスパラガス、ピーマン、ナスなどの農作物は、葉があると障害物になって収穫できませんでした。しかしAIを搭載することにより、農作物の一部が見えれば葉の後ろに収穫物の全体像を認識できるようになるなど、人間の判断に近い作業ができます。AIは、数多く間違えればいいのです。ディープラーニングで学習を繰り返すことでミスをしなくなります。

畜産に被害を与えるウイルス性の伝染病は、人が豚舎に入るとどうしても菌を持ち込んでしまい、発生リスクが高くなります。そのため豚舎洗浄ロボットを開発しています。実用化されれば、人が入って洗浄しなくても常にきれいな環境を維持できるようになります。これは大きなメリットを社会にもたらします。養豚場では、人が洗浄する時間はかなり長時間に及ぶほか、夏季は湿度100%で蒸し暑く糞が舞うなか、カッパを着て掃除をしています。こういう過酷な作業は、本来ならだれもやりたくないわけですが、この作業をロボットに置き換えると伝染病予防にもなるし、人はもっと生産的でクリエイティブな仕事に従事することができるようになります。

ドローンを農業に活用しているケースでは、例えば農薬をほとんど使わずに害虫を駆除する方法もあります。夜間に捕虫器をぶら下げたドローンを飛ばします。すると夜行性の虫は、その捕虫器のなかに入ってくるため、農薬を使わなくても駆除ができます。また、虫が発生した際は、葉の表面が茶色くなりますが、その周辺にピンポイントで農薬を散布します。農薬使用量も減ってコストの削減になるばかりか、減農薬の『スマート米』とブランド化して高く販売しているRobiZy会員もいます。

【佐々木】 私は、ロボットのビジネスがしたくて東京から山形に移住しました。山形名産の農作物として、広く染料として使われる紅花があります。最盛期には800もの紅花農家が県内にありましたが、今は70程度に減少しました。紅花は夏が収穫時期ですが、花の下にトゲがあり、熱い夏場に袖カバーをしての収穫作業は過酷で、若い人はやりたがりません。衰退していく状況を何とかしたいと、山形大学農学部に研究室を持つ画像処理専門家の仲間が、紅花の収穫ロボットの開発に取り組んでいます。これは、画像をAIに取り込んで、花をセンシング(判別)して、ロボットアームで収穫するものです。このようなAIを活用した果樹栽培・収穫では、収穫時期の判断や、収穫後の処理方法などが、色々な作物ごとにずいぶんわかってきましたので、これからが面白くなると思います。

また山形名産のサクランボは、6〜7月のわずか1カ月程度で収穫します。私の家の近所にJAの農産物直売所があるのですが、一日のサクランボの売り上げが、最盛期で1億円にも上ります。サクランボの収穫ロボットを作る企画が立ち上がり、山形県が主導し、山形大学で研究を進め、3年かけてプロトタイプができました。しかし社会実装には、まだ時間がかかると思っています。サクランボ農家に話を聞くと、「収穫の苦労なんかあまり気にしていない」と言うんですね。なぜかと聞いたら、「収穫はせいぜい2〜3週間の短期間。むしろ、4カ月かけて取り組む圃場造りの方が大変」とのことでした。サクランボの圃場造りでは、鉄のパイプを組み立てて、その上にビニールのシートをウネウネと張っていく、地上5〜6mの高所作業が必要です。そうしないと雨粒が当たって実が破裂し、売り物にならなくなるのです。この作業は、脚立から落ちてケガをする危険性と常に背中合わせで、高齢化が進む生産者は命の危険に晒されています。むしろ、こういう作業を自動化したいということでした。

サクランボの収穫後に、色だけでなく傷の有無も判断して、きれいに詰めることのできる選別機のように、付加価値を高めるためにこそロボットを活用するべきです。収穫の期間は2週間程度ですから、アルバイトの人達も呼んで収穫の喜びを地域で味わう方が社会のためにもいいと思い、「スマートチェリーファーム」というプロジェクトを地元の方々と始めたところです。

【北河】 青森県では、リンゴの廃園が多くなっていると聞いていますが、非常にもったいない話です。退潮感が広がる前に、作り方を変えるなど発想を変えていくことが必要だと思います。これまで取り組んでこられた生産農家の方々は、日照時間の調整など栽培上の様々なこだわりをお持ちです。それは素晴らしいことですが、子供には同じことを継がせたくないという声を聞きます。少し発想を変えて、状況を変化させることを厭わなければ、もしかしたら、今度は非常に有望な産業になっていくのではないかと考えています。衰退するには理由があります。変革しなければ必ず衰退します。衰退する前に手を打った所は、盛り返していける可能性が高くなります。ニーズはあるわけですから、何らかの取り組みを期待しています。

実はスマート農業の火付け役は当社だと自任しているくらい早い段階で、ロボットメーカーと農業界のマッチングを行ってきました。マッチングは、ロボットだけを開発しても難しいものがあります。例えば、トマトを自動収穫するロボットでは、手前に青いモノ、奥に赤いモノがある場合、手前の青いモノを取らないように設定する必要がありますが、青いモノをどけて赤いモノを取るなどの設定をすると、急速にロボットは高額になっていきます。トマト生産者は、採算性から導入を諦めることもあるでしょう。工業製品を分別する場合の歩留まり率は99.99%なども可能ですが、不規則で不揃いな農作物はそうはいきません。この場合、収穫は7割の遂行を目標にしようなどのルールを開発のスタート段階から作る必要があります。

あとは発想をロボット基準に変えてしまうということがマッチングのポイントのひとつです。ロボットは、並びがきれいで房になっていないトマトは、収穫しやすいので、これからは栽培する作物をロボットが収穫しやすい品種にしたり、取りやすい並べ方で植え付けるなど、ロボットの基準に合わせた環境を整えることが重要だと思っています。加えて、ロボットが旋回しやすいようなハウスの作りにしたり、使用するエネルギーの供給方法にも留意する必要があります。

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